国宝 願成寺白水阿弥陀堂

国宝 願成寺阿弥陀堂を正面にのぞむ
国宝 願成寺阿弥陀堂を正面にのぞむ

  常磐道いわき湯本ICから約6kmの山間に、静かに建っている阿弥陀堂を訪れたのは、4月初旬の日曜日でした。 かれこれ4~5年前に訪れた時に比べると、少し観光客が増えたような気もしますが、今はその境域の正面が住宅地になってしまっている阿弥陀堂も、それがつくられた当時は、山間の小さな平地にひっそりと佇む、静かな場所であったろうと思います。

浄土庭園 (2010年4月11日)
浄土庭園 (2010年4月11日)

 奥州藤原清衡の娘として生まれ、岩城則道公に嫁いできた夫人が、亡き夫の供養を兼ねて故郷平泉の毛越寺を思わせる浄土庭園を造ったのが1160年。

 中央の赤い橋を渡って、本堂を正面に見据えながら、静かに目を閉じて耳を澄ますと、周囲の山々の木々が風にそよぐ音や、小鳥たちのさえずりが聴こえてきます。 自然の音を音楽のように取り入れて、心の癒しを得るなんて、これほど洗練されたアートはないと思うのです。

                                             拝観することの出来る本堂の中には、創建された当時の極彩色の長押(なげし)や飾り天井のレプリカがあって、往時の姿をイメージすることが出来ます。 時が発酵してしまったような匂いに包まれながら静謐な堂内でお坊さんの説明を聞いていると、何か心に去来するものがあるのでは?

  阿弥陀三尊のうち、中央の阿弥陀様は戌年亥年の守護、その左右に立つ菩薩様の一方は子年、もう一方は午年の守り神だそうです。 いわきの方へ来られた折には、この浄土庭園の中に身をおいて、古の空間に心で触れてみることをおすすめします。                                        (2010年4月11日)